荒唐無稽にしてバイオレンスな純愛
《公開年》1993《制作国》アメリカ
《あらすじ》エルヴィス・プレスリーとカンフー映画を愛する青年クラレンス(クリスチャン・スレーター)は、誕生日の夜、場末の映画館で千葉真一の映画3本立てを観ていて、アラバマ(パトリシア・アークエット)に出会う。
アラバマはコールガールで、クラレンスの上司が誕生日プレゼントにと派遣したものだが、一夜を共にし、互いに恋に落ちる。
二人は翌日婚姻届けを出し、アラバマはコールガールを辞める決心をして、クラレンスが元締めドレクセルの所へ荷物を取りに行ったが、争いの末にドレクセルを射殺してしまい、その末取り返した荷物の中身はコカインだった。
二人は売りさばくことを考えて友人を訪ね、その友人のツテで大物プロデューサーとの売買交渉にこぎつけるが、時を同じくしてその交渉の仲介役の男がスピード違反で逮捕されてしまう。男は運悪くコカインを所持していたので、追及されて取引の話を白状し、警察から赦免と引き換えに協力するよう持ちかけられ、捜査のおとりにされてしまう。
さて、コカイン取引の現場では、交渉がまとまりそうな所へ警察が踏み込んでにらみ合う緊迫した中に、突然クラレンスたちを追ってきたドレクセルに繋がるマフィアも踏み込んで来て、三つ巴の銃撃戦になる。
プロデューサー一味やマフィア、警官まで皆死んでしまうが、クラレンスとアラバマは奇跡的に生き残って逃げ延びる。エルヴィスと名付けた息子とともに、メキシコで幸せに暮らす姿でエンド。
《感想》脚本はクエンティン・タランティーノ。結構過激なバイオレンスに、情熱的なラブストーリーが加わって、少し無理のある展開ながら、目まぐるしい変化に勢いがあって、それに押されてしまう。とにかく面白い。
無鉄砲なオタク男とキュートでセクシーな美女、この不思議な魅力を持ったバカップルの活躍にハラハラドキドキしながら引き込まれていく。互いを思い危険を顧みず飛び込んでいく、何にも代え難いピュアな感覚こそ「トゥルー・ロマンス」なのだろう。
物議を醸したのがラストシーン。当初のシナリオは、クラレンスもアラバマも皆死んでしまう構想だったが、監督の要望で無理矢理ハッピーエンドになったとか。やはりゴリ押しのご都合主義が見えるが、“まぁ、いいか”という気にもさせられる。
クラレンスの親父役がデニス・ホッパー、友人の麻薬中毒者がブラッド・ピットと豪華な脇役である。
この翌年、タランティーノ「パルプ・フィクション」が制作される。
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