大人の秘密がサスペンスを呼ぶ(?)秀逸会話劇
《公開年》2017《制作国》イタリア
《あらすじ》月食の夜、ロッコ(マルコ・ジャリーニ)夫妻の自宅に幼なじみがパートナーを連れて集まり、ホームパーティーのゲームで、お互いのスマホをオープンにして秘密を見せ合うことになる。
1)医者のロッコは思春期の娘と妻の折り合いが悪く、妻との関係にも悩み、他所でカウンセリングを受けていた。その妻でカウンセラーのエヴァ(カシア・スムトゥアニク)は豊胸手術を受けようとしていて、またコジモとの浮気がばれる。
2)タクシー運転手のコジモは浮気男で、新婚に関わらずタクシー配車係の恋人がいて、その妊娠がばれてしまう。その新婚妻ビアンカは妊活中で、夫が浮気していることに激怒する。一方で元カレの恋愛相談に乗っている。
3)レレは浮気がばれないよう、同機種のスマホを持つペッペとスマホを交換するが、掛かってきた電話からホモの疑いをかけられ妻からなじられる。その妻カルロッタは夫に内緒で義母の老人ホーム入所を検討していたり、フェイスブックの相手とのやり取りからノーパン趣味があることがばれる。また、過去に交通事故を起こしその罪を夫に被せた負い目を持っていた。
4)臨時教員のペッペは離婚して独身。恋人を連れてくる予定だったが一人で参加した。レレとスマホを交換したことから、実はホモであることを告白せざるを得なくなり、友人の予想以上の偏見に傷つく。
月食が終わり、パーティーはお開きになり、皆帰宅の途に着くが、“何事もなかったかのように”仲間同士の絆を取り戻し、元の生活に戻っていった。
皆が帰った後、妻エヴァはロッコにゲームに反対した理由を聞いた。「みんな大なり小なり秘密を抱えているもの」。ロッコの賢明な判断でゲームは事前に阻止されていたことが明かされてエンド。
《感想》それまでギクシャクしていた関係が、いきなり丸くなってハッピーエンドを迎えるので、誰しも「?」と思うはず。今までの話は「もしゲームをやっていたら……」の架空の物語というネタバラシが待っていた。「してやられた!」の感がある。
“月食”の意味合いは、光を覆い隠す、覆われている人の秘密を指す。
室内劇、心理劇、会話劇であり、大らかで粋な会話から人間の本質をあぶり出すように展開していく。途中まではやや退屈で中途半端なコメディという印象だったが、中盤の衝突が露わになるあたりから引き込まれていって、ラストのどんでん返しで「なるほど深い!」と感心させられた。
一つひとつのエピソードの絡みが絶妙で、練りに練った脚本と評価したい。イタリアだけでなく、アメリカの映画祭でも脚本賞を受賞している。
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