『ディーバ』ジャン=ジャック・ベネックス

歌姫とその追っかけが繰り広げる美しく小粋なサスペンス

ディーバ

《公開年》1981《制作国》フランス
《あらすじ》ディーバは歌の女神。パリの若い郵便配達員ジュール(フレデリック・アンドレイ)にとって、美しい黒人歌手シンシア・ホーキンス(ウィルヘルメニア・ウィギンス・フェルナンデス)はまさに女神。録音を拒否している彼女の歌はコンサートでしか聴けず、コンサート会場に持ち込んだ録音機で彼女が歌うオペラアリアを秘かに録音し、楽屋で彼女の衣装を盗んだ。
翌朝、サン・ラザール駅に裸足の女が降り立つ。その女ナディアは売春組織から抜け出し、組織の秘密を暴いたカセットテープを持ち、昔の仲間に助けを求めてここまで来たが、殺し屋に追われていて、仕事中のジュールの荷入れにカセットテープを投げ込んだ後、刺殺されてしまう。
ジュールはレコード店で、万引き常習犯のベトナム人少女アルバと同棲している風変わりな中年男ゴロディシュと知り合い親しくなる。
ジュール自身はそんな告発テープを持っていることを知らないが、そのテープを奪還しようとする殺し屋、それを追う警察のサポルタ警視(実は組織の黒幕)、指示を受けジュールを追う男女2人組の刑事に追い回されることになる。
衣装を返す決心をしたジュールはシンシアの滞在するホテルを訪れた。最初は怒っていたシンシアだったが、彼のひたむきさに打たれ、少しずつ心を開いていった。
そこへ台湾系のレコード業者が(ジュールの秘密録音をネタに)契約を結ばなければ海賊版を出すと、シンシアを脅迫してきた。シンシアにテープを返そうとバイクを走らせるジュールは、尾行の刑事はうまくまいたものの殺し屋たちに襲われ、間一髪でゴロディシュに助けられる。
ナディアの告発テープを聞いたゴロディシュは、大胆にも組織の黒幕サポルタにテープを買い取らせようとする。そしてサポルタと殺し屋、刑事とジュール、それにゴロディシュも加わって相まみえ、殺し屋とサポルタは倒される。
ジュールはようやくシンシアにテープを返し、誰もいないオペラ座で歌うシンシアに寄り添うジュールの姿でエンド。



《感想》歌手の追っかけをしていた若者の秘密録音のテープと、秘密組織を告発するための売春婦のテープ、錯綜した2本のテープを巡って組織の殺し屋や警察だけでなく、風変わりな中年男やレコード業者まで絡んで入り乱れるが、分かりにくい程ではなく、すべて合点のいく展開になっている。
むしろ微笑ましい位にオシャレで、遊び心があって、登場するアイテムはオタク心をくすぐる。セットは凝っているし、青を基調にした映像は美しく、もちろん音楽も素晴らしい。
ジャン=ジャック・ベネックスのデビュー作にして溢れる才気を感じさせる作品で、その非日常性、エンタメ性、スタイリッシュなセリフと映像、スリリングな展開、まさに「映画の楽しさ」が味わえる逸品。
しかし、小粋であるが故に好き嫌いは大きく分かれるかとは思う。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

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