友情、愛、裏切り、切なすぎるギャングの生涯を描く
《監督》セルジオ・レオーネ《公開年》1984《制作国》アメリカ
《あらすじ》時間軸をシャッフルした構成で描かれる。
1)青年・ヌードルス(ロバート・デ・ニーロ)は仲間を警察に密告したことからマフィアに追われ、愛人イブは殺され、友人モーはリンチにあい、阿片窟にいた本人は仲間の死を知って金を隠したロッカーに駆け付けるが、金は無く、当てのない旅に出る。
2)初老期にあるヌードルスはニューヨークのモーの店を訪れ、その妹デボラとの初恋や不良仲間との思い出を回想する。
3)ユダヤ移民の少年ヌードルスには、パッツィー、コックアイ、ドミニクという仲間がいて、そこにマックスが加わる。彼らは禁酒法の隙間をぬって荒稼ぎするが、地元ヤクザの襲撃でドミニクが殺され、怒ったヌードルスがヤクザを刺殺して6年の刑となる。
4)刑を終え出所したヌードルスをマックス(ジェームズ・ウッズ)たち仲間は待っていて、宝石店襲撃を決行し、労働争議への裏の介入という新たな仕事も始める。ある日、マックスから連邦準備銀行襲撃の計画を打ち明けられる。マックスの愛人キャロルから、彼の命を助けるには警察に密告して計画を潰す以外にはないと懇願され、ヌードルスはマックスを裏切って密告する。
5)初老のヌードルスに墓地の改葬通知が届きニューヨークを訪れる。その墓には銀行襲撃で殺された三人が眠り、側にあった鍵でロッカーから現金が入ったカバンとベイリー長官のパーティー招待状を入手する。女優になったかつての恋人デボラを訪ねるとベイリー長官の愛人になっていて、そのベイリー長官は死んだはずのマックスで、35年前の出来事はすべてマックスや組織の仕組んだ罠だと明かされる。汚職事件で窮地に立ち、過去の罪悪感に苦しむマックスから自分を殺すよう言われるが、ヌードルスはその申し出を断り彼の元を去る。追うようにマックスはごみ収集車に身を投げる。
6)阿片窟の若きヌードルスは、陶酔の中で不気味な笑みを浮かべエンド。
《感想》禁酒法時代のニューヨークで、生きるためにギャングの世界に身を投じた二人の男の生涯を描いている。
時系列に並べると、3→4→6→1→2→5となる。
ラストシーンの「笑み」の意味が論議されるが、このときヌードルスは少年時代からの仲間を(モーを除いて)すべて失い、阿片によって現実逃避し、夢の世界に漂っている。そこで見せた不気味な笑顔は、やり切れない悲しみと切なさに満ちた「笑うしかない」という絶望の淵からの笑みなのだろう。
そう解すると、人生の晩年に友人の裏切り、愛する人の背信などすべてを知り茫然自失となったヌードルスの心情とも重なるものがあり、この「笑み」をエンディングに持ってきた(シャッフルの)意図が理解できる。
友情を何より大切にしてきた男が、仲間を殺された怒りから刑務所入りし、仲間を助けようとした密告で追われる身となり、恋人とは最悪の別れを迎え、老いて友の裏切りを知る。悲哀という一語では尽くせない悲しすぎる男の物語である。
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