『日の名残り』ジェームズ・アイヴォリー

不器用で仕事一筋の執事が思う人生の黄昏と後悔

《公開年》1993《制作国》イギリス
《あらすじ》舞台は1958年のイギリス。アメリカの政治家ルイスの家に仕えるベテラン執事スティーブンス(アンソニー・ホプキンス)はかつて長年に渡りダーリントン卿に仕え、その当時の女中頭ケントン(エマ・トンプソン)から20年振りの便りをもらって、彼女に会いに行く。そして20年前を回想する。
1939年9月、英仏が独に宣戦布告し、第2次世界大戦に突入する少し前、ダーリントンホールには各国から要人が集まり国際会議が開かれていて、執事スティーブンスは女中頭として雇用されたケントンと仕事をすることになった。ストイックに仕事一途で、主人の命は絶対と心得るスティーブンスに対して、勝気なケントンは馴染めず反感を持つこともあった。
親独派のダーリントン卿がナチスの思想に影響され、ユダヤ人メイドを解雇したことから二人は対立するが、その後和解することによって二人は次第に惹かれ合っていく。
しかし、職務に全てを捧げ愛に関しては非常に奥手のスティーブンスは、好意を伝えるケントンに気づかない素振りをする。その結果、別の男と結婚するため彼の元を去る。
それから20年、再会してスティーブンスはケントンに職場復帰を提案するが、娘の妊娠を理由に断られ失望する。ケントンも間違いの人生だったと後悔を口にする。互いに失われたものを取り戻すことは出来ず、涙ながらに元の日々に戻ってエンド。

《感想》ラストシーン、部屋の窓から屋敷内に迷い込んだ鳩を、主人ルイスとスティーブンスが目にするが、鳩が自ら飛び出さないので、ルイスが捕まえて外に飛ばしてあげる。その飛んでいく鳩を追うように、広大な屋敷の全景に移るエンディングは象徴的で強く印象に残るシーンである。
まさにこの鳩こそスティーブンス、外に出さえすればあるいは飛べたのかも知れないと、その律義さ、不器用さには感慨深いものがある。
揺れ動く感情を抑えに抑えたストーリーで、ドラマチックな展開はないが、切なさが伝わってくる、大人の恋愛映画だった。いかにもイギリス映画らしい渋く落ち着いた雰囲気で、ややもすると眠くなりそうだが、そうはならなかった。
二人がお互いを異性として意識し、ケントンから好意を伝えスティーブンスがそれを拒絶するシーン。20年振りに再会し、スティーブンスは職場復帰を断られて失望し、ケントンは後悔ある人生と口にするシーン。そして別れのシーン。二人の心の鼓動が伝わって来て、一緒にドキドキしてしまう、もどかしさと切なさを味わう映画といえる。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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