『ルーム』レニー・エイブラハムソン

誘拐監禁から脱出した母子の新たな旅立ち

《公開年》2015《制作国》アイルランド、カナダ
《あらすじ》ジョイ(ブリ―・ラーソン)は17歳のときニック(ショーン・ブリジャーズ)に誘拐されて7年、5歳になる男の子ジャック(ジョイコブ・トレンブレイ)と監禁され、子どもはこの部屋の外を知らない。
テレビの情報で世の中のことを伝え、ニックに会わせないことで子どもを守ろうとしている。そして脱出の機会を狙っている。ある日、ジャックに死んだふりをさせ、じゅうたんに包んで、ニックに外に運び出すよう仕向け、幸い通行人に保護されて、ニックは逮捕された。
二人の外の世界での生活が始まったが、両親は離婚していて、ジャックを受け入れられない実の父親や、母親のパートナーとの暮らしにも苛立ちを募らせてしまう。
そんな状態の中、テレビのインタビューを受け、インタビュアーの「どんな方法をとっても子どもを外に出した方が幸せだったのではないか」という言葉に傷つき、何が正しかったのか分からなくなる。そして自殺未遂の末入院することになる。
一人になったジャックは、伸び放題だった髪を切り、母のパワーにと届ける。やがて回復したジョイとジャックは「あの部屋」を訪ねてみることにする。家具が無くなった部屋に別れを告げてエンド。

《感想》狭い監禁部屋に「閉じ込められている」と感じて欲しくない母は子に、部屋の中が本物の世界で、テレビや外の世界は偽物でしかないと教え込む。ところが監禁部屋から脱出したジャックは今まで培ってきた認識を全てリセットしなくてはならないし、ジョイが切望していた外の世界は皮肉にも精神的牢獄になってしまう。二人だけで完結していた監禁部屋なら、社会の様々な関係性と無縁でいられたから。
失われた7年の重みと他者の存在が次第にジョイを追い詰めるが、最後に支えになったのはやはり子ども。母子ともに様々な障壁にぶつかり、痛みと喜びを受け止め、ラストはその7年間に別れを告げて少しずつ前に進んで行こうとする。
導入部では「いかに脱出するか」というサスペンスの印象だったが、中盤から「社会復帰」に向けたドラマだと理解した。
母親のブリー・ラーソン(アカデミー主演女優賞)、子役のジェイコブ・トレンブレイ、ともに素晴らしい。目の演技と、目のクローズアップを多用した演出が力強く訴えかけてくる。そこには、被害者を更に追い込んでしまう社会(親を含んだ全ての周囲)のあり方が問われている。
暗く重く地味だが力作。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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