『日本で一番悪い奴ら』白石和彌 2016

自分なりの正義を求めて堕ちていった警官の実録もの

《あらすじ》柔道の力が認められ北海道警察に就職した諸星(綾野剛)は仕事に励むも結果が出せず、先輩からの助言「刑事は点数、そのために裏社会に飛び込め」の通りに、裏社会に自分の名刺を配り犯罪情報を集め始める。それが功を奏し、裏社会のパイプを通じて検挙数を上げていく。
そして暴力団幹部の黒岩(中村獅童)、麻薬運び屋の山辺太郎(YOUNG DAIS)、パキスタン人盗難車バイヤーのラシード(植野行雄)という仲間ができ、刺青を持つホステス由貴(矢吹春奈)と恋仲になる。
銃犯罪撲滅が強く要請された時代背景にあって、銃器検挙率を上げたいがために、内地の暴力団から違法に入手しようとして露見したり、暴力団への潜入捜査で失態をさらしたりする。そのうち由貴が麻薬中毒になっていて、麻薬を嫌悪する諸星は由貴を刑務所に送ってしまう。
そして大量拳銃密輸の情報が入り、税関に協力をさせ、その前に入るはずの少量の麻薬密輸は見逃して泳がせ捜査をする手はずだったが、麻薬は意外に大量でおまけに黒岩に持ち逃げされたため、諸星らは関東の暴力団に痛めつけられる。泳がせ捜査に失敗し、諸星は絶望から麻薬に手を出し、夕張警察に左遷されてしまう。
その後、銃犯罪担当時代の同僚が自殺し、太郎は仕事がうまくいかずに離婚して、警察で麻薬と違法捜査の証言をした後に自ら命を絶ってしまう。
太郎の証言で諸星は逮捕され、当初は道警をかばい続けた諸星だったが、二人の死を知ると態度を変え、道警の組織犯罪の証言をするが、有罪は諸星ただ一人で、判決文は組織犯罪に触れることなくエンド。

《感想》原作がノンフィクションという点では前作「凶悪」に共通するが、「凶悪」が後味悪い韓流クライムサスペンス風であるのに対し、本作にはコミカルな要素が加わりフットワークも軽く、脚本も十分にこなれたオリジナリティを持っていて、エンタメ作品としてはより面白く仕上がっている。
真っすぐで純朴な若者がどんどん悪に手を染めて堕ちていく、それもやり方こそ間違っているが、自分なりの正義、道警のためを願ってしたこと。若者の「認められたい」という欲求は、ときとして組織の規律を超えてしまうもの、
うまくいけば出世に繋がるが失敗すれば組織からはじかれてしまう。エンディングから諸星の悔しさ、切なさが伝わってくる。
うまく世渡り出来ない若者に、社会の価値観、組織の規律は頭から信じず、距離を置いて見よ、と教訓を垂れているようでもある。
綾野剛はこの破滅していく若者像を見事に演じ切っていて、一人舞台の感がある。惜しまれるのは絡む女性たちの描き方の粗さで、もっと丁寧に描いていれば、諸星の人物像はもっと豊かになっていたものと思う。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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