『プラダを着た悪魔』デヴィッド・フランケル

悪魔でも悩む、その姿に共感し反発する若き女性の生き方

プラダを着た悪魔

《公開年》2006《制作国》アメリカ
《あらすじ》ジャーナリストを目指しながらもままならず、おしゃれに興味のないアンディ(アン・ハサウェイ)が向かった先は、一流ファッション誌「ランウェイ」の編集部。カリスマ編集長ミランダ(メリル・ストリープ)に意外性を買われて働くことになるが、地獄の日々が待っていた。
アシスタントの立場は絶対服従、高度な要求を命令され、失望の言葉を浴びせかけられ、アンディは深く傷つくが、ミランダの右腕のファッションディレクター、ナイジェル(スタンリー・トウッチ)から自分の甘さを指摘されて意識が変わる。仕事に気合が入り、服装も華やかなものになり、周囲が驚くほどの変身を遂げ、ミランダの信頼を得るようになる。
だが仕事の充実の一方で、私生活は壊れていき、友人との距離が出来て、同棲していた恋人ネイルと破局してしまう。そんな状態でミランダに同行してパリ・コレに出張するが、有名エッセイストと一夜の関係を持ち、新たなファッションブランド立ち上げと、編集長交代の計画があることを知る。
ミランダの右腕ナイジェルを新ブランドのパートナーに、ミランダのライバル、フォレを新編集長にという計画だが、発表前にミランダはグループ会長を脅し、フォレを新ブランドのパートナーに据えて我が身を守った。
右腕ナイジェルは落胆し、アンディもナイジェルを裏切って自分を守ったことに納得しがたい思いを持つ。仕事一筋でありながら、離婚や子育てに悩む「悪魔」ミランダの人間らしいところに共感しながらも、ファッション業界は皆の憧れであり、そのトップであり続けるには周囲の犠牲は付きものというミランダの考えに反発し、アンディはミランダの元を去る決心をする。
そしてジャーナリストの夢を叶えるため新聞社の面接を受け、そこで新聞社からの問い合わせを受けたミランダから「推薦」の言葉があったことを聞く。やがて街中で出会う二人、車に乗り込むミランダに小さく手を振るアンディと、一瞬目が合うもすぐに視線をそらし、小さな微笑みを浮かべるミランダ、それぞれの歩みがまた始まって、エンド。



《感想》ミランダにとってファッション業界は唯一の世界であり、そのトップに君臨することは唯一の生き方。しかし、仕事一筋であるが故に離婚や子育てに悩む自分の一面も理解していて、こんな自分に反発するアンディに共感を示したりもする。
アンディは彼氏と破局して一夜の浮気とやや尻軽ながら流れに逆らわない潔さがあって、ファッションの世界にすべてを賭ける気合は自分にないと気づく。お互いの生き方を認め合ってラストは爽やかだった。
分かりやすいサクセスストーリーだが、上昇の過程には様々な確執や犠牲が付きまとうこと、究極の選択を乗り越えてきたこと、それがエネギッシュな女性たちによって爽快に描かれている。
ミランダからの電話を受けたケータイを池に投げ棄てるアンディがいいし、エンディングのミランダの含み笑いもいい。魅力的な女性が闊歩している映画であり、後味の良さは格別である。

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投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、偏屈御免。映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があり、そこに喜びがあります。鑑賞はWOWOWとU-NEXTが中心です。高齢者よ来たれ、映画の世界へ!