『at Home アットホーム』蝶野 博 2015

疑似家族の愛と絆、奇想天外だが意外に重い

《あらすじ》森山家の父・和彦(竹野内豊)は泥棒、母・皐月(松雪泰子)は結婚詐欺師、長男・淳(坂口健太郎)は偽造印刷所勤務、長女・明日香(黒島結菜)は中三、次男・隆史(池田優斗)は小四という5人家族だが、実は「傷を負った他人同士の寄せ集め家族」だった。
父・和彦は妊娠した妻のために泥棒を始め、捕まって刑務所に入り、妻は流産し、離婚となって空き巣稼業に舞い戻る。母・皐月は夫のDV、長女・明日香は父親からの性的虐待で、共に列車に飛び込もうとしていたが、皐月が明日香を止めることで、一緒に暮らすようになる。
長男・淳は裕福な家庭に育ったが、跡取りとしての両親の過度な期待が負担になり、優秀な弟の存在もあって家に居場所がなく、両親に反発して家出する。家出中にパトカーに追われる和彦と知り合い、一緒に生活を始める。次男・隆史は両親に育児放棄されていて、和彦が空き巣に入った先で拾ってくる。
そんな男3人と女2人は、ある日立ち寄ったペットショップで和彦と隆史が皐月と出会い、後日、皐月と明日香が和彦の家に招かれたことから、新しい5人家族となる。
ところが皐月の結婚詐欺がバレて相手の男に拉致され、1千万円要求される。淳が印刷所で精巧な偽札を作り人質交換に臨むが、隆史が傷ついた皐月を見て、隠し持ってきた銃を発砲し相手の男を射殺してしまう。和彦は罪を背負うつもりだったが、淳の策で男の手に拳銃を握らせ、和彦の太ももに銃弾を撃ち込み正当防衛と見せかけ減刑になるが、結局和彦は刑務所に入る。
何年か後、出所した和彦を、堅気の印刷所に勤めている淳がスーツ姿で出迎え、5人が暮らしたかつての家に出向くと、3人が笑顔で帰りを待っていてエンド。

《感想》偽造印刷所の経営者(國村準)のセリフ「(偽パスポートを前にして)使う人次第。本物かというよりどれだけ自然かということ」。これがそのまま家族にあてはまって「血の繋がった本物の家族でなくても、互いに思いやり自然な役割ができていれば、それは本物の家族」というメッセージ。
疑似家族が既に出来上がったところから映画は始まり、徐々に個々の傷が明かされ、「家族」が形成されていく。設定は奇想天外、展開も現実的ではないが、シーンの一つひとつはリアルで、結構重く響く。本物のHomeとは?という明確でストレートなメッセージが、偽りの家族のリアリティを一層輝かせる。
設定や展開の非現実性を超えて、物語(フィクション)の面白さを堪能できる映画として、黒沢清「トウキョウソナタ」、内田けんじ「鍵泥棒のメソッド」に匹敵する作品。突っ込み所は数多く、脚本の完成度がイマイチなのは認めた上で、直球勝負の潔さを評価したい。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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