愛も人生も心のままに、楽しくて切ないインド風ラブコメ
《公開年》2011 《制作国》インド
《あらすじ》耳が不自由で口がきけないバルフィ(ランビール・カプール)が、資産家との愛のない結婚に悩むシュルティ(イリアナ・デクルーズ)、自閉症のため家族からの愛に恵まれなかったジルミル(プリヤンカー・チョープラ)と出会い、二人の不幸な人生の転機を誘うストーリー。
映画は、養護施設でソーシャルワーカーを務めるシュルティの元へ、バルフィの臨終が伝えられ、彼の元へ旅する途中の回想から始まる。
二人が出会った‘72年、絶世の美女シュルティにバルフィが一目惚れして猛アタックするものの、シュルティには親も認めた婚約者がいて、シュルティも心惹かれながら二人は別れてしまう。一方、バルフィの父親が運転手を務める資産家一家の当主が亡くなり、その相続をするのが孫娘のジルミルで、お金が必要なバルフィはジルミルを誘拐することを考え……警察に追われるドタバタ捕り物劇が繰り広げられる(そこにチャップリン、キートン、ジャッキー・チェン等々有名映画のパクリ、いやオマージュが多々挿入される)。
二人が別れて再び会ったのは6年後の‘76年。バルフィは身代金目的の誘拐容疑でシュルティの前で逮捕され、シュルティはバルフィの事件に関わり過ぎたが故に自分の家庭を壊してしまう。もう一人のヒロイン、ジルミルはバルフィだけには心を開き、お互い次第に惹かれていき結ばれる。
そして年老いた「現在」になる。シュルティのセリフ「完璧な夫婦は愛に不自由し、不自由なあの人は愛に満ちていた」のとおり、臨終のバルフィに妻ジルミルは寄り添い、夫の後を追うように旅立つというエンディング。
《感想》何と言ってもシュルティの美しさに目を奪われ、ジルミルの自閉症の演技(素顔は超美人)に圧倒される。カメラワークが光る鮮やかな色彩と映像、エネルギッシュに疾走するキャラクターたち、ダンスや歌はないものの、あふれるパワーはやはりインド映画。
シュルティに肩入れして観ていたせいか、シュルティが可哀想過ぎる気もするが、愛のない生活に終止符を打ち、独立した女性として自分の人生を生きたと思えば救われるか。人生の選択に迷いは付きものだし……。
シュルティには愛に迷いがあったが、ジルミルにとってはバルフィが唯一の人だった、結局バルフィはジルミルの一途な気持ちに応えたということなのだろう。「愛に言葉はいらない。心のままに」というメッセージか。
それにしても150分は長すぎる。オマージュ盛り沢山の追っかけ劇はもっと短くても、という気はするが、映像も音楽も好みの映画だった。
ついでながら、老けメイクの安易さも印象的。白髪にしただけの学芸会的明るさ、こだわりの無さ、分かりやすさはいかにもインド風。
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