『ペーパー・ムーン』ピーター・ボグダノヴィッチ

詐欺師の男と、娘(?)の心温まる珍道中

《公開年》1973 《制作国》アメリカ
《あらすじ》1935年の大恐慌期のアメリカ、人を騙しては聖書を売りつけて小銭を稼ぐ詐欺師のモーゼ(ライアン・オニール)は、亡くなった元恋人の葬式でその娘アディ(テイタム・オニール)に出会い、アディを叔母の家まで送り届けるよう頼まれ、嫌々ながら引き受けてしまう。
抜け目のないモーゼは死因が交通事故だと知ると、加害者の兄から慰謝料をせしめ、それを知ったアディから非難される。
そして子連れ道中が始まるが、アディは大人顔負けに頭の回転が速く、モーゼはアディを相棒として旅を続けることにする。売り上げは増加し、二人は良いパートナーとなった。懐が温かくなったモーゼは、ダンサーのトリクシーに入れあげ旅の仲間に加えるが、アディが罠を仕掛け、トリクシーが浮気したかのように見せかけて、二人を引き離す。
次にひと儲け企んだ二人は、偶然見つけた酒の密売人の倉庫から酒を盗み出し、それをまた密売人に売りつけたが、話を聞きつけた警察官(密売人の弟)に追われ、結局一文無しになってしまう。
もはや商売の意欲も失せ、何とかアディを叔母さんの家まで送り届けるが、お互いに一緒に過ごした楽しい日々が忘れられず、別れ難くなっていた。いったん別れたものの、モーゼのオンボロ車を追うアディ。「まだ、200ドル(交通事故の慰謝料)貸したままよ」。止めた車が勝手に走り出してその車を追う二人、また二人の旅が始まってエンド。

《感想》1973年制作なのにモノクロ映画なのは、時代の雰囲気を出すためだという。ストーリーも映像も一級品だが、何と言ってもテイタム・オニールの演技(と言うより魅力)で輝いている映画。仏頂面をして憎まれ口をたたいても可愛い。ラスト、丘の向こうから大きな鞄を携え走って来る姿は感動的な健気さだった。
モーゼに近づく女を罠に掛け、浮気したかのように見せかけて、モーゼの気持ちを引き離すという作戦が見事に成功する。その後のモーゼいわく「大人になっても男を騙すような女になるなよ」アディは「うん」。詐欺師から「騙すな」と言われ、騙した娘が「うん」と答える。絶妙な会話だった。
結局、親子関係の真実は分からないが、だんだんと「かけがえのない二人」になっていく、その様が微笑ましいし、それを実の親子が演じているからなおさら可笑しい。
感動的な親子ものなのだが、大げさに涙を誘うような演出はなく、押しつけがましさも感じることなく、全体的に乾いた(湿っぽさのない)映画という印象。観終わった後の心地良さは格別である。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です