『罪の手ざわり』ジャ・ジャンクー

現代中国の問題を鋭く突いた任侠風バイオレンス映画

《公開年》2013 《制作国》中国、日本
《あらすじ》急激に変化していく中国現代社会で実際に起きた事件をもとに4つのオムニバスで構成している。
(1)山西省の炭鉱で働く中年男(チアン・ウー)は、村の共同所有だった炭鉱の利益を全て吸い上げる町の実業家と、それらと賄賂で繋がっている村長に苛立ちを感じ、抗議するが袋叩きにあってしまう。ついに猟銃を持ち出し関係者を一人ひとり始末していく。
(2)出稼ぎと偽って、実は強盗を繰り返して妻子へ仕送りをする男(ワン・パオチャン)は、母の誕生日に合わせて家に戻ったが、妻に「村の暮らしはつまらなくて」と言う。再び家を出た男は銃を手にまた強盗を決行するのだった。
(3)不倫の男性と別れ新しい町に来た女(チャオ・タオ)は、風俗サウナで受付の仕事をしていた。ある日不倫相手の妻が職場にやって来て追い詰められ逃げ出すが、続いて質の悪い客がしつこく迫ってきて、そのとき彼女の中で何かが壊れた。隠し持っていたナイフを手に客を血祭りにあげていくのだった。
(4)広東省の工場で働く若者(ルオ・ランシャン)は、彼の不注意が原因で友人をケガさせ、工場から逃げ出して彷徨い始める。何とかナイトクラブのボーイの仕事を見つけ、そこで知り合ったダンサーの女と親密になるが、厳しい現実の前に恋を諦める。加えてケガをさせた友人からも追い詰められ、行き場を失った若者は団地の屋上から身を投げた。
ラストは、(3)の不倫女が出所し、(1)の大企業の採用面接を受ける。その後、京劇(任侠の芝居)を観る観衆と女、「あなたは自分の罪を認めるか?」の問いが流れる。それは誰に向けられたものか。女は静かに涙してエンド。

《感想》中国制作で北野オフィスも制作に参加した日中合作だが、中国では未公開。4つの事件は、現代中国が抱えている問題(汚職、大企業偏重の政策、貧富の格差等)を犯罪の要因・背景と指摘し、それに暴力で対抗するドキュメンタリー・タッチのバイオレンス映画になっている。ただ、その中に任侠パロディのような演出と、適度にラブストーリーも入っていて、バイオレンス色を和らげているようだ。
また、このバイオレンス色なのだが、その捉え方こそ、この映画のポーズとかトリックによるものという気がする。猟銃を肩に町中を歩ける訳ないし、出稼ぎ男の拳銃はあまりにシンボリックで、拳銃で開放され輝きを放っている感があった。不倫女のナイフさばきはあまりに鮮やかで、藤純子(緋牡丹お竜)さながらであった。すべてが任侠パロディなのである。
そして、最後の若者はあまりにあっけなく自殺してしまい、その脈絡の無さは歴然としていて、この混沌とした状況を描いた映画の最後に、絶望と自死、不倫女の涙を持ってきたところに、制作者の強いメッセージを感じる。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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