『光をくれた人』デレク・シアンフランス

孤独な男に訪れた妻という光、子という光

《公開年》2016 《制作国》アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド
《あらすじ》1918年、第一次世界大戦から帰還した兵士トム・シェアボーン(マイケル・ファスベンダー)は、戦争で心に傷を負い、豪本土から遠く離れた孤島ヤヌス島の灯台守の仕事に就く。
島へ向かう豪本土の港町で若い女性イザベル(アリシア・ヴィキャンデル)と出会い、二人はやがて結婚し、島での暮らしを始めるが、二度の流産に見舞われ、子宝に恵まれない。
そこへ漂着したのが、男の遺体と泣きじゃくる女の赤ん坊を乗せたボート。イザベルは赤ん坊を自分たちの子として育てたいと提案し、トムもそれに従う。男の遺体は秘かに埋葬した。
赤ん坊を「ルーシー」と名付け育てるが、町に出向いた際、生まれたばかりの赤ん坊と夫を海で亡くしたという女性ハナ(レイチェル・ワイズ)に出会う。ハナは当時の敵国ドイツ出身のフランクと結婚し娘をもうけたが、若者に絡まれたフランクが娘と一緒に海に逃げ行方不明になっていた。
ルーシーがその娘(名前はグレース)と気づいたトムは、匿名でハナに、フランクの死とグレースの無事を伝えた。時が過ぎルーシーが4歳になった頃、イザベルもルーシーの実の母がハナであることを知る。トムはルーシーをハナの元に返すことを決意し行動に出るが、警察の捜査が入りトムはフランク殺害容疑で逮捕される。イザベルは、ルーシーを勝手にハナに返す決断をしたトムを許さず、証言(漂着時、既に死んでいたこと)を拒む。また、ハナの元に行ったルーシーは、ハナに心を開こうとしなかった。イザベルとルーシーの深い絆を知ったハナは、イザベルにルーシーを返す旨の申し出をするが、イザベルはハナから幸せを奪った罪悪感に苛まれ、またトムの真意を知って、警察に真実の全てを証言すると共に、ルーシーの引き取りを拒否する。
ルーシー・グレースの名となった娘はハナの元で成長し、男の赤ん坊を連れてトムの元を訪れ、既に他界しているイザベルの娘あての手紙を受け取る。

《感想》孤島、隔絶された世界に舞い込んだ幸せの光、それを欲するのは必然だが、二人の世界から出てみると、他人に不幸をもたらしていることに気付く。また、男は、妻からもらった幸せ、それに見合う幸せを妻に与えたい、しかしそれが他人に不幸をもたらしてしまう。罪を背負うのが自分だけでなく、光をくれた妻にまで及ぶことを苦慮し葛藤する。
三人の胸が締め付けられるような演技に感情移入させられるが、筋立てには若干無理を感じる。父親が死んで赤ん坊だけ助かる遭難? ドイツ人という理由で赤ん坊を連れて決死の舟出をする事情?……。
でもこの映画で描きたかったのは、子という光、妻という光を巡る寓話であり、ファンタジーの要素を否定したら成り立たない世界であることを強調したい。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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