『バリー・リンドン』スタンリー・キューブリック

野望に生きた男の、栄光と挫折の物語

《公開年》1975 《制作国》イギリス
《あらすじ》1750年代のアイルランド。農家に生まれたレドモンド・バリー(ライアン・オニール)は、いとこのノラに恋をするが、イギリス軍で裕福な家のクイン大尉にとられ、ノラの家族に追われるように村を出て、イギリス軍に志願して大陸に渡った。
しかし、軍隊の厳しい生活に耐えかね脱走、警察のスパイになって、ギャンブラーのシュバリエ・ド・バリバリの家に潜入するが、警察を裏切り、シュバリエの相棒になり、二人はイカサマで荒稼ぎをする。
やがて、伯爵の若い妻であるレディ・リンドン(マリサ・ベレンスン)を籠絡し、まもなく伯爵が病死したため二人は結婚する。1年後、二人の間に子ども(名前はブライアン)が生まれ溺愛するが、前夫の子どもであるバリンドンとの仲は最悪だった。もしレディ・リンドンが亡くなると財産はバリンドンのものになるため、バリーは爵位を授かろうとパーティを盛大に催して財産を浪費し、更にバリンドンの憎しみを買った。
その後、バリーはブライアンの誕生祝に馬をプレゼントしたが、その馬から落ちる事故でブライアンを亡くし、酒に溺れるようになった。
バリンドンは家をバリーから取り返すことを決心しバリーと決闘、その結果バリーは左足を失う大怪我をして城から離れ、城を掌握したバリンドンから毎年の年金を支払うことでイギリスからの追放を宣告される。バリーは全てを失い、故郷のアイルランドに戻る。年金支払いの小切手にサインするレディ・リンドンの姿でエンド。

《感想》18世紀ヨーロッパの華美な世界が、美しい風景と相まって、完璧な絵画的世界を作り上げている。まず堪能すべきは、この映像美である。
自然光だけで撮ったという野外の風景は遠景までシャープに映し出し、ロウソクの明かりだけの室内は闇の中に人物が浮かび上がる、このこだわりは驚異的である。
物語はというと、長尺だし、やや「伝記的」で盛り上がりに欠け、感情移入しにくい部分はある。だが、伝記的ストーリーとは言っても、一人の男が野望に燃えのし上がっていくが、運に見放され失墜していく栄枯盛衰の物語で、少し侘しいながら、退屈せず鑑賞できる作品に仕上がっているのはさすがである。
ラスト近くのバリーとバリンドンの、義理とは言え父子の決闘シーンは緊張をはらんでいた。
それにしても、「時計じかけのオレンジ」「2001年宇宙の旅」など本作とは全く違ったジャンルで傑作を撮れるキューブリックの才能には驚嘆する。

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投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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