母娘のすれ違い、強かった女性の子育て失敗物語
《公開年》1945 《制作国》アメリカ
《あらすじ》ある夜、地元の名士モンティ・ベラゴン(ザカリ―・スコット)が射殺され、被害者の妻ミルドレッド(ジョーン・クロフォード)の元夫バート・ピアース(ブルース・ベネット)が容疑者として逮捕される。
しかしバートが犯行を否定しないにも関わらず、ミルドレッドは「バートは犯人ではない」と主張し、事件に至るまでの経緯を語りだす。
4年前、夫バートの失職と浮気で家を追い出し、ミルドレッドは生活のためウェイトレスとして働き始めるが、贅沢に何不自由なく育てられたヴィーダは額に汗して働く母親を見下すようになる。やがて、かつての富豪モンティが所有する家を手に入れレストラン経営するまでになるが、その態度は改まらず、モンティが実質的に破産している状況の中で、ヴィーダをこれ以上堕落させたくないと、ミルドレッドはモンティに別れを告げる。
ところがヴィーダの奔放な生活は変わらず、金持ち息子と妊娠騒動を起こしたため彼女を家から追い出すが、しばらくして酒場の歌手として働いていることを知る。ヴィーダを取り戻すため、ミルドレッドはモンティと結婚して彼の屋敷を手に入れ、これまで以上にヴィーダに贅沢な生活をさせるが、その結果、会社の経営は悪化しモンティとの溝は深まる。
拳銃を手にモンティの元に向かうと、モンティとヴィーダの抱擁を目撃してしまう。モンティが愛しているのは自分だと主張する娘と、それを真っ向から否定する夫、娘が夫を射殺し、母親ミルドレッドは娘の犯行を隠す工作をする。
元夫の友人ウォーリーに罪を着せようとして失敗し、自分で罪を被ろうとするが見破られ、警察がヴィーダの犯行を突き止めてエンド。
《感想》原作は「郵便配達は二度ベルを鳴らす」のジェームズ・M・ケイン、監督は「カサブランカ」のマイケル・カーティス。
70年以上前に作られた作品とは思えない、洗練され高密度でスピード感溢れる傑作。ストーリー展開にもセリフにも無駄がなく、実にテンポがいい。
また、元夫、現夫、友人のダメ男三人も適度にカッコよく母娘に絡んできて、暗くなり過ぎないのがいい。
大事に育てられたが故に傲慢な娘になり、最後まで改心することのない小悪魔的な娘を、突き放そうとするものの見捨てられず、最後まで守ろうとした母親の波乱の人生。男に頼らず力強く生きた女性だったが、子育てには失敗してしまった母親。お金が入れば浪費が膨らむのは当たり前だが、親子関係の教訓は今も変わらない気がする。
ストーリーにはややノスタルジックなものを感じるが、J・クロフォードの演技はそれを超えるくらいに熱い。
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