『ニキータ』リュック・ベッソン

残虐にしてオシャレな女殺し屋の、凶暴な純愛

ニキータ

《公開年》1990 《制作国》フランス
《あらすじ》パリで浮浪生活をする麻薬中毒のニキータ(アンヌ・パリロー)は、仲間と共に深夜の薬局に忍び込み、駆け付けた警官との銃撃戦の末、仲間は死亡し生き残ったニキータは警官を射殺した後に逮捕される。
無期懲役を言い渡され、薬物を投与され意識を失うが、目覚めると殺風景な部屋にいて、秘密警察官のボブ(チェッキー・カリョ)から政府の秘密機関の工作員になるよう働きかけられる。抵抗しても無駄と知ったニキータは、銃の扱いや格闘、マナーやメイクまで暗殺者としての訓練を受けることになる。
それから3年、誕生祝のレストランで最初の暗殺指令を受け、無事仕事をこなしたが、それは卒業試験でもあり、以後、外での生活を許される。
やがて、スーパーのレジ係・マルコ(ジャン=ユーグ・アングラ―ド)と恋仲になり同棲するが、そこへボブが現れヴェネツィア行きのチケットをプレゼントされる。ところが、その旅先で暗殺指令が入り、仕事はこなしたものの、愛するマルコに秘密を打ち明けられず苦悩する。
ニキータに、大使館から機密情報を奪取する仕事が入り、大使館に潜入するがミッションに失敗し、掃除人・ヴィクトル(ジャン・レノ)の助けで逃走したものの、ヴィクトルは死亡する。
仕事に失敗したニキータは身も心も疲れていて、ニキータの仕事に気付いていたマルコは仕事を辞めろと慰める。そんなマルコの言葉を嬉しく思いながら、迷惑をかけてはならないと思ったニキータは一人姿を消す。マルコは、ニキータから託された大使館機密情報のマイクロフィルムをボブに渡し、二人は「お互い寂しくなるな」と言い交わしエンド。



《感想》リュック・ベッソンが「レオン(94年)」でハリウッド・デビューを果たす4年前に本国で手掛けたもので、「レオン」の元ネタとも言える。
テンポ重視で、ストーリー的にはやや省略し過ぎかなという気もするが、それが適度な緊張感を生んでいて、エリック・セラの音楽も映画の躍動感に一役買っている。画面に釘付けにされるラブ・サスペンス映画。
また、際立ったキャラばかりで、残虐にしてオシャレ、凶暴だが小粋、といった一面があって、これがドロドロしそうなドラマを救っている。嫌いな人にとっては「ありえない」となるが……。
恋人の前では健気で可愛らしく、仕事となると容赦なく殺しをこなす、それを恋人に打ち明けられず苦悩する。最後に選んだのは切ない別れ、ボロボロの不良少女から洗練された女殺し屋に変身していく様を、アンヌ・パリローが見事に演じている。また、渋めの指導教官ボブと、軽めだが徹底して優しいマルコも存在感を示している。

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投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、良品発掘。そして、世間の評価に関係なく私が心動かされた映画だけ、それがこだわりです。やや深読みや謎解きに傾いている点はご容赦ください。 映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があります。「いやぁ~映画って本当にいいものだ」としみじみ思います。