愛のカタチはさまざまだが、求めれば得られる
《あらすじ》母子家庭なのに母・ヒロミ(ミムラ)が男に走り、育児放棄されたトモ(柿原りんか)は叔父のマキオ(桐谷健太)を頼り、預かることになったマキオはトランスジェンダーのパートナー・リンコ(生田斗真)と同棲していた。
また、トモには同性愛に悩む男子の友達・カイ(込江海翔)がいて、クラスでいじめに合っていた。
トモは最初リンコに対して抵抗を示したが、その優しさ、本当の母性に触れて打ち解け、家族の一員になっていく。と共に同性愛のカイも受け入れていく。
マキオの母親サユリ(リリィ)は認知症で施設に入っていて、その介護担当がリンコだったことから結ばれたもの。その優しさと美しさは性を超越して一目惚れしたという。
リンコは戸籍を女性に変え結婚をし、トモを養子に迎えることを望んでいて、男根を模した謎の編み物を作り、煩悩の数(108個)作ったら燃やして供養するという。
ところがある日突然、トモの母・ヒロミが現れてトモを引き取りたいと言い、それぞれの本音がぶつかり合う。結局、トモは実の母親を選び、別れを惜しみながらリンコたちの元を去るが、二人からのプレゼントを開けてみると、リンコが編んだ毛糸の大きな二つのオッパイだった。
《感想》本作のキャッチフレーズは「カタチなんて、後から合わせればいい」。
トランスジェンダーとの恋愛でいうなら「性のカタチ」、母親の愛や親子関係でいうなら「家族のカタチ」。恋愛でも親子でも、注がれる愛を受け入れて初めて愛が成立する。ここで描かれる恋愛も親子関係も、世間一般から見ればイビツである。恋愛は当人同士が受け入れても、周囲が認めてくれるとは限らないし、自分の愛探しに夢中な母親を持った子は、そんな母を受け入れるのにまだまだ時間がかかりそうである。でも親の愛がわずかだが注がれていることは判っている。それならゆっくり(毛糸を編むように)愛のカタチを見つけていけばいい、そんなメッセージではないだろうか。
以前の荻上作品「かもめ食堂」「めがね」とは一線を画する作風で、本人も「第二章の始まり」と公言したとか。今まではフワフワしていて、意味不明な脈絡の無い会話が飛び交う薄味の癒し系という印象だったが、本作はLGBT、育児放棄、いじめ、認知症介護、虐待、親子のあり方、いろんなテーマが盛り込まれていて、社会派風の味付けもあるのだが、軸はやっぱりブレていない。
出演者がみな優しすぎる(小池栄子だけ敵役)ような気もするが、心地よい温かさに満ちていて、リンコとヒロミの間で愛の選択を迫られるトモには思わず涙してしまった。オリジナル脚本らしいが、キャラ設定が素晴らしく、それを演じた役者(特に生田、柿原)もハマっている。
※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。