『阪急電車 片道15分の奇跡』三宅喜重 2011 

現代のおとぎ話だが、人生の機微に触れる逸品

《あらすじ》美人でしっかり者のOL翔子(中谷美紀)は自分を裏切った元カレの結婚式に白いドレスで出席する。女子大生のミカ(戸田恵梨香)はイケメン彼氏のDVに悩んでいる。
主婦康江(南果歩)は子どもを通した付き合いのママ軍団から抜けられず、誘われるたびにそのストレスから胃を痛める。女子高生の悦子(有村架純)は受験に悩み、彼氏との関係に悩み自暴自棄になっている。美帆(谷村美月)は地方出身の劣等感から周囲に馴染めなかったが、軍事オタクの圭一(勝地涼)と知り合い二人の世界を作っていく。少女ショウコ(高須瑠香)は同級生から仲間外れにされ辛い思いをしている。
登場人物が皆、心に孤独や辛さを抱えていて、たまたま電車に乗り合わせた他人が、その辛さを癒したり、悩みを解決に導くキーパーソンになっていく。
最初にOL翔子の愚痴を聞き励ましたのが時江(宮本信子)と孫の亜美(芦田愛菜)。女子大生ミカがDV彼氏と別れるきっかけを作ったのが女子高生悦子たちの噂話。もっと自分を大切にしてくれる人と付き合うべきだと……。胃痛で電車を降りた主婦康江に、付き合いはほどほどにと助言したのが女子大生ミカ。受験で悶々とする女子高生悦子に勇気を与えたのが美帆と圭一のカップル。その二人も電車内で知り合い、自分の殻を破ることで世界が広がっていた。そして最後に、仲間外れにされても凛としている小学生ショウコを勇気づけたのがOL翔子で、降りた駅で女子大生ミカに出会い、意気投合して友達付き合いが始まる。

《感想》登場する七人の女性たち、抱えていた悩みや辛さから解放されていく物語。特にOL翔子と初老の女性時江は流されない強さを持ち、凛として気持ちがいい。復讐を果たしながら惨めな自分を感じている翔子に、その心意気をほめる時江。ラストで翔子はいじめられっ子の小学生ショウコに、「あなたの態度は立派。綺麗な女性は損するように出来ている」と包むように慰め励ます。この二シーンは涙腺が緩む。
出来過ぎであり得ない話ではあるが、「人生の機微」が盛り沢山でホンワカした気分になってくる。現代のおとぎ話である。
こんなセリフが印象に残った。
「泣くのはいい。でも自分の意志で涙を止められる女になりなさい」(時江が孫の亜美に向かって。だがミカに対しても語りかけている)
「価値観の違う人とは辛いと思えるうちに離れた方がいい。無理に合わせていると、そっち側の価値観に馴れてしまうから」(ミカから主婦康江への忠告)
おとぎ話は得てして賛否が分かれる。リアリティがないことを承知で、おとぎ話の世界に浸ってみたい人にはお勧めである。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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