何のために戦うのか、勝負が全てのプロ雀士の生き様
《あらすじ》敗戦直後の上野。坊や哲(真田広之)は博打の師匠・上州虎(名古屋章)に連れられチンチロ賭博に行き、プロの博打打ち・ドサ健(鹿賀丈史)に出会い、対抗心と共に友情に近い気持ちを抱く。
そんなドサ健と一緒に哲は米兵相手の秘密カジノ店に足を踏み入れ、そこのママ・ゆき(加賀まりこ)と親しくなり麻雀修行をする。また、魔術師的なプロ・出目徳(高品格)に出会いイカサマの技術を身に付け荒稼ぎをする。
そして、哲と出目徳が組んで、ドサ健とゼゲンの達(加藤健一)を相手に対決するが、哲たちの圧勝に終わり、ドサ健は持ち金で足りず、愛人まゆみ(大竹しのぶ)の家の権利書まで手離した。
ドサ健は再度の対決のため、まゆみを質入れするようにゼゲンの達から金を借り、まゆみは吉原に売られそうになるが、ドサ健たちのプロ魂に惚れた達の計らいで窮地から逃れた。ドサ健はあくまで勝負してまゆみを取り返すことにこだわっていた。
一方、カジノ店は手入れを受けて閉店し、ゆきも人知れずいなくなり、哲は愛するゆきを失ってしまった。男に頼らず一人で生きるゆき、裏切られながらも一人の男を思い続けるまゆみ、対照的な二人の愛のあり方を通して哲は大人へと成長した。
哲、ドサ健、達、出目徳が、それぞれ一匹狼のギャンブラーとして再対決し再び、哲は互角に渡り合うが、突然出目徳が倒れ急死する。あまりの大きな手に、ヒロポン中毒で弱っていた心臓が耐えられなかったのだ。三人は出目徳の遺体を彼の家の前まで運んで捨て、帰りに上州虎を拾って、再び勝負を続けようと家に戻った。
《感想》終戦直後の混乱期、全員がろくに働こうとせず博打に走るクズ人間、ただそれぞれが自分の哲学を持っていてぶつかり合う。
キャラの立った登場人物ばかりで、役者は皆素晴らしいが、特にドサ健・鹿賀のグイグイ引っ張っていく、エネルギー溢れる演技が光る。博打を愛し、一人の女を愛した、それだけの男である。
ラスト、急死した出目徳の大きな手を称える声に「死んだ奴は負けだ」と言い放ち、持ち金はおろか衣服まで剥ぎ取り、自宅前の水たまりに投げ棄てるあたり、良識を捨て切った男の信念のようなものが見える。
正当化できる生き方ではないが、この混乱の時代を真剣に生きていたことは確かで、何を支えに生きていくのか、男たちの熱さ、生き様が伝わってくる。
鬼気迫る演技とテンポのいいストーリー展開に惹き込まれてしまう。
観終わったあと、後味の悪さと清々しさが同居しているような不思議な魅力を持った映画である。
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