堅気のパチーノがドンの座に就くまでの苦悩の青春
《公開年》1972 《制作国》アメリカ
《あらすじ》マフィアのドンであるビトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)には三男一女の子どもがいて、長男ソニー(ジェームズ・カーン)は直情型で短気、次男フレド(ジョン・カザール)は優しくて気が弱い、三男マイケル(アル・パチーノ)はインテリで強い意志を持ち堅気で生きようと考えていた。末娘はチンピラのDV男と結婚している。
ドン・コルレオーネは、相手が貧しくても弱者でも助けを求めてくれば親身になって問題解決にあたり慕われていた。落ち目の歌手のカムバックを後押ししたり、暴行された娘の復讐を依頼されたり……。
ある日、麻薬取引の仕事をするソロッツオが仕事を持ちかけてきて彼は断り、その結果銃撃を受けるが一命は取り止める。ソロッツオへの復讐を引き受けたのはマイケルで、それを果たしシシリー島へ身を隠す。その後、ソロッツオの背後にある大組織タッタリアとの抗争は激しさを増し、ドンの跡目を継いだ長男ソニーは敵の罠に落ちて殺され、シシリーのマイケルにも手が伸びたが危うく暗殺から逃れた。
傷が癒えたドンは殺し合うことに思い悩み、五大マフィアのドンを集め和解を成立させ、且つ息子マイケルを呼び戻した。
帰国してドンの座に就いたマイケルは、父の死を機に遂に動き出し、ライバルのボスたちを次々に殺し、コルレオーネファミリーの勢力復活を実現させる。
《感想》マイケルの成長物語であり、マフィアの抗争という形を借りながら、親子、家族、男と女の愛の物語でもある。
父のドンの時代のマフィアは、近隣外国の横暴から住民を守る組織として生まれ、組織、家族を守るための集団だったが、アメリカに渡り時代も変わり、何事も競争の社会、力で奪う社会に変わっていく中で、ドン・ビトーを理想としながら、単に「守る」だけでは生き残れない、闘いに挑まなければならないマイケルの苦悩が浮かび上がってくる。
マイケルは優しく愛に溢れた性格で、愛するが故に義務感や使命感を意識する立場に置かれると、逆に常軌を逸した非情さや冷徹さが現れてしまう。愛するが故に、マイケルは幾度も傷つき、大切なものを失っていく。
それは父のドンが望んでいないことだったが、ファミリーの一種の気高さであり宿命でもあった。守るべきものを守るために、孤独を深め強くなり、そして次世代を支配する孤独で有能なモンスター(ドン)を産んでいくことになる。
マーロン・ブランドの重厚さ、若きアル・パチーノ、ともに最高だが、脚本、演出、音楽すべてが完璧といえる作品。
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