本能と怒りを解放し修羅場を迎えるブラック・コメディ
《公開年》2014 《制作国》アルゼンチン
《あらすじ》全6編のオムニバス
(1)おかえし:飛行機内の客が話すうち、皆が共通の知人の話になり、その知人こそ飛行機のパイロット自身で、乗客は彼が集めた復讐相手だった。最後は、恨みを持つ両親のもとに飛行機ごと突入する。
(2)おもてなし:かつて父親を自殺に追い込んだ男がレストランの客として現れる。料理人は「猫いらず」で復讐を目論み、躊躇するウェートレスと男がもみ合いになり、料理人が男を刺し殺してしまう。
(3)パンク:オンボロ車の大男を追い抜く際に罵り走り去るが、パンクして追いつかれて大ゲンカ。2台とも橋下に転落して炎上し、抱き合った遺体で発見された二人は痴情のもつれか心中かと疑われる。
(4)ヒーローになるために:爆破事業の技術者が、路上駐車のトラブルがもとで会社をクビになり、警察への復讐をする。車に爆発物を仕掛け、わざとレッカーさせて、被害者を出さないよう爆破させた。日ごろから不満を持つ市民に支持され、刑務所で彼はヒーローになった。
(5)愚息:ひき逃げした息子を庇おうと使用人に身代わりを頼み、検察官、弁護士も巻き込むが、三人の欲が出て金額交渉でもつれ、妥協した三人が出頭しようと出たところで、容疑者の使用人が被害者の夫に殺されてしまう。
(6)ハッピー、ウェディング:幸せな結婚式を迎えた二人、ところが花婿がかつての浮気相手を結婚式に招待し、それに気づいた花嫁が激怒し二人して大暴れ。無茶苦茶な式になってしまったが、花嫁の悲しみを目の当たりにした花婿が彼女を抱きしめ、改めてお互いの愛を確認する。
《感想》このブラックさは、日本では受け入れられないだろうと思うほど凄い。製作意図には「人が持っている本能を抑えている理性のタガが外れたとき、解放された怒りという修羅場の世界を描いたら面白いかも……」とか。人間の本能から生まれる野蛮性、暴力性が辛辣に描かれ、不愉快ではあるが、どこか笑えて、「ありかな?」と思わせてしまうところが凄い。
ほんのちょっとしたきっかけから大きく崩れていく人生。一時の感情に任せて行動し、誤った判断を下し、もっと自分の人生を大切にしていれば……そこに転落へのスイッチがある。
人生は瞬間瞬間で試されたり、判断を求められる。一歩判断を誤ると、どんどん追い詰められ、とんでもない結末に……でもラストの男女のように、感情を抑え、理性を取り戻すことでやり直しもきくという、人生へのエールとも思える。
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