『さらば冬のカモメ』ハル・アシュビー

窃盗の新兵と、護送する下士官に芽生える奇妙な友情

《公開年》1973 《制作国》アメリカ
《あらすじ》海軍下士官のバダスキー(ジャック・ニコルソン)とマルホール(オーティス・ヤング)は、基地の募金箱から40ドル盗んだ罪で8年の刑を宣告されたメドウズ(ランディ・クエイド)という若い水兵を、ノーフォーク海軍基地からポーツマスの海軍刑務所まで護送するよう命令された。
休暇気分で出発した二人だったが、18歳のダメ水兵の無垢さに魅かれ、若くして刑務所に入れられてしまうメドウズに同情を抱いてしまう。そこで刑務所までの道中で、メドウズに人生の何たるかを教えてやろうと考える。バーに立ち寄り、ホテルで酒盛りをしたり、ニューヨークでは日蓮宗の集会に出ている娘と知り合い、娘はメドウズに脱走を勧めたが、メドウズは二人を裏切れないと断る。
ボストンでついに三人は売春宿を見つけ、メドウズは二人の勘定で初めての体験をするが、そのことが彼の気持ちを大きく変えることになる。愛と自由の尊さに気づく。彼の中にニューヨークの娘が教えてくれたトロントの脱走先へ行く気持ちが強くなっていく。目的地に近づいた旅の終わり、三人は冬の公園でバーベキューをするが、何かを決意した表情で立ち上がったメドウズはゆっくり歩きだし、手旗信号で別れを告げ脱走を試みる。しかし二人から逃げ切れず、バダスキーから激しく殴られる。
目的地にたどり着き、メドウズは刑務所に収容されるが、若い当直士官からメドウズの傷の理由を聞かれ、虐待か逃亡かと疑いを持たれる。「逃亡ではなく虐待」と話してメドウズを守り、収監される若者の背中をずっと見ていた二人は、軍隊の理不尽さと自分たちの無力さを思いながら、それぞれ別の帰路につくことにし、ノーフォークでの再会を約束して刑務所を後にした。

《感想》軍隊という管理下に置かれた人間のやり切りない気持ちが全編に溢れている。しかも「俺たちは海軍で一生メシを食うんだ」という半ば将来を諦めた二人が、純真無垢な年若い新兵と出会い、奇妙な連帯感が生まれてくるところが、ごく自然で面白い。
三人は立ち寄る町々で様々な事件を引き起こすのだが、二人が世間を知らない若者に先輩から注ぐ愛情であるとともに、二人にとって、軍の閉塞感や将来への不安感を払拭したい気持ちの表れでもあったのだろう。
大きな事件はなく淡々と三人の交流が描かれる地味なロードムービーで、全体は緩い感じで展開するのだが、決して間延びせず独特のリズム感がある。そして三人の友情めいた感情が自然に湧いてくるところがとてもリアルで、個性的な三人の心情が情感豊かに伝わってくる。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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