死を前にした若者の「生前葬」という別れ方が切ない
《公開年》2014 《制作国》アメリカ
《あらすじ》甲状腺と肺にがんを抱えた女子大生のヘイゼル(シェイリーン・ウッドリー)と、骨肉腫で片足が義足のガス(アンセル・エルゴート)はがん患者の支援団体で出会った。
ヘイゼルがガスに、好きな作家ピーターの小説が中途半端な終わり方をしていると話したことから、ガスはヘイゼルの気を引こうと、ピーターに小説の続きを聞きたいとメールを送った。そして二人はピーターが住むアムステルダムに向かった。
メールの返信をくれたのはピーターの秘書で、ピーターは来ることを知らず、散々な応対でおまけにアル中だった。悲しみと怒りでいっぱいの二人を秘書はなだめ、その案内でアンネの家を訪れ、アムステルダム観光をして、その夜、二人は結ばれた。そしてガスはがんが再発したことを告げた。
帰国後、ガスは化学療法を始めるが経過は思わしくなく、盲目の友人アイザックとヘイゼルを呼んで「生前葬」を行った。ヘイゼルは弔辞で、「限られた時間の中で、あなたは私に永遠をくれた」と述べた。
ガスは亡くなり、その葬儀にピーターが現れて、ガスが死ぬ前にピーターに添削を依頼したという手紙を受け取った。内容はヘイゼルへの弔辞で、そこには深い愛の言葉が綴られていた。
《感想》この映画の凄さは、死を受け入れたところから出発している点で、弔辞を依頼したり、生前葬をやる若者映画を初めて観た。日本や韓国の難病ものと違って、底にユーモアの精神が満ちていて、どこまでも前向きに、残りの人生を明るく生きようという姿勢が見える。そして、悪意に満ちた作家の存在、子どもを亡くし堕落した生活を送る作家こそ、若者が示す前向きな「死の受け入れ」と正反対の存在として、キーマンの役割を果たしている。
がん患者のリアリティが希薄という批判があるようだが、リアリティだけでは救いが生まれない。死に向き合うことはとても重いことだが、二人のひたむきな明るさが救いのある映画にしている。難病+恋愛ものとしては一歩抜け出た明るさを感じた。
この二人は知的で爽やか、若者なのに長年生きてきたかのように人生を語る。原作ジョン・グリーン「さよならを待つふたりのために」の人生哲学が端々に感じられ、深読みのできる映画だと思った。
何より死に向かう二人の若者の心のヒダや思い、繊細な心の動きが丁寧に描かれ、切なさが伝わってくることを評価したい。
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