『おやすみなさいを言いたくて』エリック・ポッペ 

女性戦場カメラマンの仕事と家庭をめぐる葛藤を描く

《公開年》2013 《制作国》ノルウェー、アイルランド、スウェーデン合作
《あらすじ》報道写真家レベッカ(ジュリエット・ビノシュ)は戦争の真実を伝えるべく世界中を飛び回っている。
場所はカブールの紛争地域、あらかじめ葬儀を行ってから、体に爆薬を巻き付け自爆テロに向かう女性を、レベッカは密着取材していた。しかし、市街地に着き車を降りる際、数回シャッターを切った行為が警備兵の目に付き、拘束されそうになった女性が想定外の自爆となって、市民に多くの犠牲者を生みレベッカも怪我を負った。
夫のマーカス(ニコライ・コスター=ワルド―)がアイルランドから駆け付け帰国するが、夫は「待つ家族の気持ちを考えろ」と怒りをぶつける。
そこにケニアの難民キャンプ取材の仕事が入り、比較的安全とされているため、アフリカに関心を持つ長女と現地入りすると、ここにも対立関係があって、機関銃を持った戦士に襲撃される。この瞬間、戦場カメラマンのスイッチが入ってしまい、ガイドの制止も聞かず襲撃の様子をカメラに収めたが、恐怖の渦中にあった長女とは気持ちに距離が出来てしまう。
帰国しても家族との溝が埋まらなかったが、長女は母親への不信感を抱きながらも、そこまで仕事に執着する母の情熱について考えるようになる。
そしてまたレベッカの元に「イスタンブールとカブール」取材の仕事が舞い込む。カブールへ出発するその日は、長女の「アフリカ旅行発表」に当たっていて、空港に出向いたものの、長女の学校に引き返す。発表において、母の仕事を指し長女は「あの子どもたちは母を必要としている。私よりずっと……」と母親を一人の人間として尊敬している旨を話した。レベッカは胸がいっぱいになり、家族にしばしの別れを告げてカブールに向かう。その紛争地で見たものはまたしても自爆テロに向かう少女の姿、報道写真家ではなく母親に戻ってしまったレベッカは、シャッターを押すことが出来ず、くずれ落ちてしまう。

《感想》この映画では、戦争の大義とか善悪を声高に主張することはなく、戦争・紛争によって、最も弱い一般市民が最も大きな犠牲と悲しみを背負うと訴えている。争いが無くなることを最も願っているのは争いの渦中にいる市民で、彼らこそ取材・報道を強く望んでいることを長女の言葉で伝えていた。また、母親が仕事を辞める、続ける、どちらを選択しても家族として支えていくことに変わりはない、という家族の覚悟も語られている。
紛争地での取材シーンでは緊張感著しく、家族と過ごす海辺の光景(特にロウソクを付けた紙気球が印象的)ではその緊張を解きほぐす柔らかい映像になり、その映像の対比が素晴らしい。また、ジュリエット・ビノシュの淡々と抑えた演技も秀逸である。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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