『カリートの道』ブライアン・デ・パルマ 

夢を見た大人の、ほろ苦く切ないノワール

《公開年》1993 《制作国》アメリカ
《あらすじ》1975年のニューヨーク。カリート(アル・パチーノ)は友人の弁護士クレインフェルド(ショーン・ペン)の尽力で30年の刑を5年で終えて出所した。
かつては麻薬王だったが、今は足を洗い、レンタカー屋を営むことを夢見ていた。だが、従兄弟の麻薬取引のトラブルに巻き込まれ、心ならずも手を血で染めることになり、死んだ従兄弟の金を仲間のディスコ事業に投資し、儲けを貯め始める。そして昔の恋人でダンサーのゲイル(ペネロープ・アン・ミラー)と再会し、二人の新たな生活を願うようになる。
しかし、クレインフェルドはコカインに溺れていて、服役中のマフィアのボス、トニーに脅され脱獄の手伝いをさせられることになり、彼に恩義があるカリートは断り切れずに手を貸す。だがクレインフェルドは脱獄したトニーとその息子フランクを殺し、間もなく彼はマフィアに命を狙われ重傷を負う。
検事はクレインフェルドの犯行を暴くため、彼の虚偽の証言テープを聞かせてカリートに司法取引を持ち掛けたが、カリートは取引に応じず、クレインフェルドの入院先に向かう。クレインフェルドはマフィアに対抗すべく拳銃を所持していたが、カリートは弾を抜き取り、マフィアに殺させるよう仕向けてクレインフェルドに別れを告げた。
しかし、マフィアの手はカリートにも迫っていて、ゲイルと待ち合わせたグランドセントラル駅までが電車内の逃走劇になり、駅構内が壮絶な銃撃戦になってしまう。そして、ゲイルと列車に乗り込もうとした瞬間、裏切った仲間の手引きによってチンピラに撃たれ、静かに息絶えた。

《感想》愛する女のために足を洗おうとしながらも、周囲によって否応なく再び悪に手を染めざるを得なくなる男、しかも女に「やめて」と懇願されても義理に生きる熱い男……日本の任侠映画と同じパターンである。
だが役者が違う。パチーノとショーン・ペンの信頼と反目の微妙な駆け引き、その意気がピッタリでともにハマリ役だった。それからラストシーンは担架に乗せられたパチーノのアップ、周囲の画像が回転する中、焦りと安堵が交錯する複雑な心情を眼球の動きだけで表現してしまうその演技力が凄い。
演出の凄さはラストのかくれんぼ&鬼ごっこ。そして凄絶な最期のはずなのに「静かに息を引き取り」、エンディングで映る「バハマで踊るシルエットのポスターが動き出す」という救いのある余韻が、観終わってからも心を揺さぶる要素になっている。この動くポスターこそ死にゆく男が最後に見た夢である。

※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。

投稿者: むさじー

名画座通いの昔からネット配信の現代まで、温故知新、共感第一、ジャンル無節操をモットーに選んでいます。 何度も、観る度に感動する映画は大切ですが、二度と観たくない衝撃に出会うのも楽しみです。

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