人生はやり直せる。いつでも、何度でも。
《公開年》1993 《制作国》アメリカ
《あらすじ》ボストンの高校に通う苦学生・チャーリー(クリス・オドネル)は、アルバイトで、盲目の退役軍人フランク・スレード中佐(アル・パチーノ)の世話をすることになる。
そのフランクは気難しく、周囲の誰をも拒絶し、離れで一人生活していた。ある日チャーリーは、友人たちが校長の愛車に悪質ないたずらを仕掛ける現場を目撃してしまい、校長からは、犯人を明かすなら大学への推薦をするが、断われば退学という二者択一を迫られ、苦悩を抱えながら休暇に入った。
フランクはそんなチャーリーをニューヨークに強引に連れ出し、自分の「計画」を手伝うように言う。兄家族に会い、行きずりの美女とタンゴを踊り、目が見えないのに高級スポーツカーを運転したり、豪遊して高級娼婦を抱いたり……チャーリーは共に過ごすうちに、フランクの人間的な魅力と隠された孤独を知り、徐々に信頼を寄せていく。旅を終える頃、旅の最終目的である拳銃自殺を実行しようとするフランクだったが、チャーリーの必死の引き止めで思いとどまる。
休暇明けには高校の公開懲戒委員会が開かれ、チャーリーは校長の追及を受け窮地に立たされるが、それを救ったのがフランクだった。チャーリーの保護者として現れ、彼の高潔さを主張する演説を打ち、委員の支持と満場の拍手を受けたのだった。フランクも再び人生に希望を見出し、家族には優しく接するようになり、新しい日常を歩き始めてエンド。
《感想》闇を生きる絶望から生きる意味をも失った盲目の退役軍人と、友への裏切りか、自分の将来かの選択に悩む高校生とが、数日間の交流を経て、それぞれが道を見出し歩き始めるというストーリー。まず、盲目の軍人役アル・パチーノの瞳を動かさず、孤独の淵をさ迷うエキセントリックな演技が圧巻で、加えてナンパしかけた美しい女性ドナ(ガブリエル・アンフォー)とタンゴを踊るシーン、ラストの大演説が素晴らしい。
フランクの深刻さに比べると、チャーリーの悩みは軽すぎるし、校長の追及の仕方も教育者としていかがか、と思わせるが、戦争と平和な生活の維持は表裏一体で、戦争によって絶望を味わう人もいるし、そんな人たちの支えで表向きの平和が成り立っている、のが現実だとは思う。どちらかに偏ることのない、バランスの取り方がアメリカ映画だなぁと思わせる。そして、希望の光を投げかけてくる。
人生は何度でも、いつでもやり直せる。小さな勇気があれば……そんな気にさせてくれる傑作である。
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