『フライド・グリーン・トマト』ジョン・アヴネット 

昔話「差別と女性の自立」に奮起する主婦の物語

フライド・グリーン・トマト

《公開年》1991 《制作国》アメリカ
《あらすじ》夫婦倦怠期にある主婦エヴリン(キャシー・ベイツ)は、ある日出かけた老人ホームで、そこに暮らす老女ニニー(ジェシカ・タンディ)に出会い、50年も前の昔話を聞く。
——少女イジーは最愛の兄バディを突然の鉄道事故で失い、バディの恋人だったルースと、失意のうちに深い友情で結ばれていった。やがてルースは結婚するが、夫フランクがDV男だったため、イジーはルースを婚家から連れ帰り、二人で大衆食堂「ホイッスル・ストップ・カフェ」を開店する。自由奔放で芯の強いイジー、知的で穏やかなルース、二人の人柄で店は繁盛した。そこへフランクが子どもを連れ戻しに現れるが、子どもを守り、やがてフランクは車ごと行方不明になる。イジーたちに容疑がかかるが、周囲の仲間による裁判中の支援活動もあって無罪を勝ち取り、事件は迷宮入り。二人は夫婦のように助け合い暮らしたが、やがて、病身だったルースが、我が子を気遣いながら天国に旅立った。残されたイジーと仲間たちは、ともに力強く生きていくことを決意するのだった。————
その話を聞いたエヴリンは、深く感動し、生きていく希望を見出し、夫もエヴリンを見直し始める。そして老人ホームを出たニニーを自宅に迎え入れ、一緒に新たな人生を歩み始めることになった。ルースの夫は皆を守るため仲間が殺したこと、イジーはニニー自身だと打ち明けたのだった。



《感想》二人が始めた食堂「ホイッスル・ストップ・カフェ」の名物料理がフライド・グリーン・トマト。黒人やホームレスたち、弱者を差別する当時の風潮の中で、それに屈することなく、彼らを温かく迎え入れ、自立した活動をした二人の女性。二人の友情物語のように描かれたことに、原作者ファニー・フラッグから不満の声があったという。イジーとルースは親友であると同時に同性愛のカップルだった。「自分たちが差別の対象であるからこそ、他の差別も許さない」という側面があったのに、それが友情という美名に隠れてしまったからとのことである。その意見はわかるが、本作からも十分に差別排斥のメッセージは伝わってくる。それより、その話に感動して、夫依存の暮らしから自立した女性として歩み始める主婦エヴリンの方が気になる。
昔話(過去編)で描かれた「女性の自立」と、現在編の主婦のそれとではギャップがありすぎて、現実味に乏しい気がしてしまう。それと、現在編がコメディの方向に傾き過ぎたことも絵空事と感じる要因かも知れない。
過去編が優れているだけに、そのメッセージが現在の状況に反映され、もっと本質的な「女性の自立」が描けていたら、より深みのある人間ドラマになっていたものと惜しまれる。

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投稿者: むさじー

映画レビューのモットーは温故知新、共感第一、良品発掘。そして、世間の評価に関係なく私が心動かされた映画だけ、それがこだわりです。やや深読みや謎解きに傾いている点はご容赦ください。 映画は広くて深い世界、未だに出会いがあり発見があります。「いやぁ~映画って本当にいいものだ」としみじみ思います。