大切なものを失ったとき、初めて自分の愚かさを知る
《公開年》2011 《制作国》アメリカ
《あらすじ》ハワイに住む弁護士マット(ジョージ・クルーニー)は、妻と二人の娘とともに暮らしていた。また、先祖代々受け継がれてきた広大な土地の管理受託者になっていて、売却すれば、自然は失われるものの一族に莫大なお金が入り、親戚一族はそれを望み、彼自身もそれでゆっくりしたいと考えていた。
ところがある日、妻エリザベートがボート事故にあい、昏睡状態に陥ってしまう。彼自身、家庭を顧みなかった自分への当てつけかと思い悩み、二人の娘は情緒不安定になってしまい、娘の口から妻の浮気疑惑が発覚する。そんな中、妻の容態が悪化し、妻の意志に従って生命維持装置を外す決断をする。
マットは娘らとともに、妻の浮気相手スピアーに会うためにカウアイ島に飛び、その雄大な原野がもつ神秘的で厳かな美しい自然に感動して、売却すべきか否か悩む。スピアーを訪ねると、彼には家族があり、離婚する気はなかったとマットに詫びた。
そのスピアーは売却予定の不動産業者の義弟にあたり、予定通り売却すればスピアーにも大金が入ることになる。親族による投票で売却はいったんスピアー関連の不動産会社に決まったが、管理者であるマットが、自然豊かな土地を手放さないと宣言し、売却話を反故にした。
いよいよ妻の生命維持装置が外されたそのとき、スピアーの妻が病室を訪れ見舞うが、彼女もまた深く傷ついていた。マットは、娘とともにエリザベスの骨を海に散骨し、三人でやり直すことを誓った。
《感想》家族の死とそれにまつわる秘密、その難題に、家族が一緒に取り組み乗り越えて、絆を取り戻すという家族再生の物語。併せて主人公にはお金か自然保護かという選択も付きまとう。
三人で一枚の毛布にくるまりテレビを見ているラストシーン、ペンギンにまつわるナレーションが流れる。「ペンギンは海を飛び出し大行進をする。だが飛ぶことはできない」。ペンギンが南極の過酷な自然に耐え歩んでいるように、人もまたどんなに辛くても歩くしかない、と言っているようだ。
金持ちではあるがフツーの男が、突然妻を失い、今まで思いが及ばなかった自らの役割に気づかされる。家族を守り、美しい自然は残そう。さまざまな確執や悩みを経て、落ち着くべきところに落ち着き、静かな諦念と新たな決意に行き着く。
男を取り巻く状況は深刻だが、ハワイの牧歌的な風景がそれを救っていて、コミカルなやりとりにもつながっている。このバランス感覚は確かなもので、軽やかなメッセージになっている。
※他作品には、右の「タイトル50音索引」「年代別分類」からお入りください。